http://www.umds.ac.jp/nakauchi/mem/10.html
以前から読んでみたかったダイエーの中内功氏が唯一の著作「わが安売り哲学」。図書館にたまたまあったので借りてみた。タイトルの安っぽさとは違いすごい熱量と哲学の著作だった。
何より書き出しからぐいと引き込まれた。この本は民衆のために書かれた本だということが伝わってくる。
「私は商人である。そして今後も商人としての途を追求しつづけてゆくだろう。私にとってキャッシュレジスターの響きは、この世の最高の音楽である。私にとってショッピングの楽しみを味わいながらスーパーマーケットの店内を歩く人びとを眺めることは、いかなる名画よりも心の弾むことである。
私どもが真心をこめて「よい品をより安く」と願って開発し商品化した品々が売れることは、消費大衆が私たちを支持している証拠であり、その瞬間、瞬間に私たちは遠い未来に向かって一歩一歩着実に前進していると信じている。」
〜「わが安売り哲学」中内功著より
「企業にはオペレーションとマネジメントの力がいる。オペレーションは、敵をなぐり倒す腕力だ。マネジメントは敵から防禦する力である。」
〜「わが安売り哲学」中内功著より
そして、誰にでもわかるような言葉で、横文字もさらりと解説してしまう。かと思えば、経済の研究本かと思うような記述もある。
「もちろん価値の循環過程からいって価値が実現するのは、流通業者ー消費者の段階であり、三者を包含した経済社会の主権者は消費者である。」
〜「わが安売り哲学」中内功著より
これなんて柄谷行人氏の本か?とか思ってしまう。これらが渾然一体となって中内氏の「安売り哲学」として語られる。毛沢東までの飛び出てくるこの本はどうりでたった数年で19刷も売れまくったわけだ。
ただ、中内氏の判断で絶版とされた。理由は復刻版の「わが安売り哲学」冒頭に詳しく書かれている。
そして、この本のラストは中内氏の戦争体験から導き出された「信念」で印象的に終わる。
「戦争末期に体験した極限状況が、現在の私の核になっている。友を信頼して眠り、そのまま食われてしまったとしても仕方がないではないかというあのときの追い詰められた気持ち。人間やるだけやるよりほかないじゃないか、という現在の気持ちである。努力の果てにすべてを投げ出したような、なげやりな気持ちである。そこに楽天主義も生まれてくる。こんな楽天性がないと、人間生きられるものではない。」
〜「わが安売り哲学」中内功著より
情熱的に流通革命の実践と論理と語りまくった最後は地獄のフィリピン戦線での想像もできない体験から汲み出された信念。なんとも不思議な感覚になり、facebookの感想を投稿した。
すると、一冊の岩波新書を紹介してもらった。
タイトルがそのものズバリ「戦争体験と経営者」だ。
http://www.umds.ac.jp/nakauchi/mem/10.html
ここでは5歳ほど違うが対照的な堤清二氏と中内功氏の比較から始まり、壮絶な従軍体験を経た経営者たちが事業を行う中で反戦・平和を求めたことが紹介されている。特にワコールの塚本氏が、創業〜労組との対決の話など食い入るように一気に読んでしまった。
1945年の敗戦時。従軍しなかった高級官僚や将校がずるがしく立ち回ったということを教えてくださる方もいたが、私自身が創業〜小企業の経営者という立場だからか、そういった方向はあまり惹かれなかった。(知識として学びたいとは思っている)
むしろ、「戦争体験と経営者」という視点で、過去の成功された経営者についてもっと知りたいと中内氏の「わが安売り哲学」に導かれて、今は考えている。