読書量は多くはないが、心に残った本はブログに残している。あとから振り返ると時代や私の情勢を反映している気もする。分析まではしていないが。
2023年の心に残った本をテーマと読んだ時期別の並べておこう。未来の自分に向けて。見出しのテーマは何となくおお掴みなのはご容赦ください。
重苦しい世界編
1月にこの本を読んだ。香港の騒動があり、もう深圳には行けないなと感じたりしていた時期。
サブタイトルの21世紀「中華」圏の政治思想を知りたくて読み出したが・・・ユーラシア大陸の復権と梅棹忠夫の「文明の生態史観」を知ったことのほうが大きな収穫だった。
1950年代に書かれた文章にも関わらず、2023年現代を語っているかのような文章に驚く。 軽快な文章にも関わらず、鋭い切り込みと仮説に引き込まれた。今、改めて使える見立てなのではないか、、、 と読了後に読書メーターに書きつけたが・・・この時、2023年が想像以上にユーラシアの時代になるとは思ってもみなかった。
様々な軍人、政治家が出てきて、様々な思惑で自国のために動くが、戦争は始まる。 また自国を守るために手を打てば打つほど、戦争に発火すると燃え上がる。それはもはややむ得ない矛盾だろうか。 上巻では、まだ本格的な会戦、有名な塹壕戦は始まっていない。ただ、兵士の命を消耗する戦い方が開始される。経済的関係によるコストへの恐れだけでは、戦争抑止には不十分だと感じた。
希望の哲学編
昨年読んだ「チョンキンマンションのボスは知ってる」に続く小川さやか先生の2冊目。
本作に出ている「ウジャンジャ」は我々の日常でもあるはずだけど、「良くないことだ」としてしまってる気がした。 その考え方が息苦しさもたらしているかもと。
経済自由化、市場経済の中、小売商、卸売商同士が、互いのことをまともに知らず、口約束で日々の商売をやりくりし、持ち逃げもある中で、互いに「支えて合っている」あっていることに驚かされた。
市場経済の希望はそこここにすでにあるのかもしれない。 姿をかえながらとも感じた。
図書館から借りた「出口なお」を2〜3日で一気に読了。 凄惨としか言いようのない人生の苦難から厳しくもゆたかな意味をお筆先を語り続けた出口なお。
著者の社会変化との関わりで客観的な分析の底に、出口なおへの優しい眼差し。
最後の一文を読み、歴史研究本なのに思わず涙が流れた。 不思議な読書体験になった。
毎年、何らかのハイデガーの翻訳本やハイデガー解説本を読んでいるが、今、ハイデガー哲学をタブーなく俯瞰できるのは本書のみではないか。 「野の道」にある「隠された調和」について長く困難なハイデガーの旅路。 引き込まれるようにあっという間に読了した。
再読したい。
物語編
私は小説や架空の話はあまり読まない。しかし「サラゴサ手稿」は分厚い上中下巻にはまり込んだ。
下巻を読み終わった直後の感想。
「ついにサラゴサ手稿の長い旅は終わった。 豊穣な時間を過ごせた。 最後はピタリの複雑で多様な物語は収まった。 解説本を読みたい気分。」
岩波から解説本が出ると期待していたけど・・・残念。
人生の役に立つことはないが、絶対に豊かにしてくれる作品だ。
まとまらないまとめ
2023年はアフターコロナが約束された明るい1年だと期待したが、総じて暗い影が全世界にのしかかり続けた印象。それはユーラシア大陸の復権、戦争とも繋がる気がして前半にそういう本を読んだが、予想通りか・・・ただ、個人や仲間が生きていく可能性もまた本には多様に展開されている。
2023年のピックアップした本たちを眺めてそんなことを思う。
2024年はどんな本を読むのだろう。