【234本目】社内メルマガで橋を渡る言葉たち

2020年4月。
コロナの緊急事態宣言が出た直後、僕は毎月1日に社員向けのメールマガジンを配信することを始めた。
直接会えない日々の中で、社員が会社や将来に不安を感じているのは目に見えていた。
だったら、言葉で橋をかけてやろう。そう思ったのが始まりだった。

毎月3,000文字くらい。
経営方針や事業の状況を、なるべく正直に、前向きに書いた。
社員一人ひとりの机に、自分の声を置くような感覚で続けていたけれど、最初は「本当に読んでくれてるのかな?」という疑問もあった。

でも、ある日ふと気づいた。
会議や日々のやりとりの中で、以前メルマガに書いた言葉や考え方が、自然と社員の口から出てくる。
「ああ、橋を渡って言葉が届いてるんだな」と、妙に嬉しかった。

コロナが落ち着き始めたころ、会社はハイブリッドワークを基本にすることにした。
もう毎日顔を合わせるのが当たり前じゃない。
だから、このメルマガはやめなかった。
オンライン会議やチャットでは伝わらない背景や温度感を、文章ならちゃんと渡せると思ったからだ。

世の中では動画やSNSでの社内メッセージが増えているけれど、文章には文章の良さがある。
読む行為には「自分のペースで消化する時間」があり、一度文字になったものは何年後でも読み返せる。
そういう意味で、文字は時間にも強い。

まもなく70号になる。
100号まであと3年。そのとき僕は60歳だ。
会社も僕自身も、その頃にはたぶん変わっている。
でも、このメルマガという橋は、そこまで渡し続けようと思っている。
単なる社内報じゃなく、経営の思いを現場に届ける大事な橋だから。

100号を迎える日に、その橋の向こうにどんな景色が広がっているのか。
それを楽しみに、また来月1日の原稿を書き始める。

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