
1980年台末から90年代初めが僕の大学生時代だ。今ではバブル景気末期を楽しんで、駆け込み就職もできた世代とか言われているが、まさにその通りだと思う。
とはいえ、いつも金がなかった。
時給を考えずにやりたいアルバイトをやっていたことや、そもそもあまり働きたくなかったからだ。
(今では週6日働くワーカホリックおじさんだが・・・)
だから長期休暇の娯楽といえば、有り余る時間を使って、青春18切符と安宿を巡る一人旅だった。
一人旅に出ると、意外に金を使わなかった。
歩いてばかりだから酒も飲まず、飯も適当になり、安宿に泊まり、人にも会わないからだ。
とはいえ、鈍行電車の移動は退屈になってくる。
そんな時は伸びたテープをウォークマンで聴きながら、読書しかない。
(スマホもPCもない時代・・・)
そして、旅のお供は常にジャック・ケルアックの「路上」だった。
西海岸ぽいカバーイラストがかっこよかった。
今では旧訳になっているのか。
(「オンザロード」より「路上」の方がしっくりくるので、そのまま続ける)
「路上」が鈍行電車旅の読書にいいのは、文章が短いエピソードの連続なので、切れ目もはっきりしてて、どこから読み始めても、どこでやめても問題ないこと。
何より長いので、旅の最中に読み終わる心配もない。
風景に飽きてだるい時、酒を飲んでいい気分の時、一人でさみしい気分の時。
「路上」には、どんな時も付き合ってくれるシーンがある。
「ジャック・ケルアック展」で、断片的な自身の旅の記憶を思い出した。
コロナ禍の平日ということもあり、終始、観覧は私一人。
だからゆっくりと舐めるようにみて回った。
ただ、思い出が蘇るばかりで、もう一度、「路上」を手に取り、旅に出たい!とは湧き上がらなかった。
「ジャック・ケルアック展」は過去の自分との対話のようだった。
それでも楽しい時間だった。
さよなら。時間だけ持て余した青春の時間。
コメントを残す