
小さな会社を経営していると、まとまった休みを取るのが案外むずかしい。
20代後半から50代後半まで、ずっとそんな生活を続けてきた。
一日まるごと休もうと思うと、事前調整が必要で、結局いつも通り働いてしまう。
それでも、不意に「細切れの空き時間」が生まれることはある。
そういう時間の使い道は、読書か散歩くらいしか思いつかなかった。
仕事柄、生成AIはほぼ毎日触っている。
あるとき、ふと「これ、競馬に使えないだろうか」と思った。
それまで競馬を含め、ギャンブルにはほとんど興味がなかった。
関心を持った理由は単純で、競馬1レースごとに公開される情報量の多さだ。
出走馬、過去成績、馬場、オッズ。
これだけのデータが揃っているなら、生成AIで分析して、不確実性に挑戦できるのではないか。
そんな好奇心だった。
経営者として、事業の不確実性にはずっと向き合ってきた。
分析して、仮説を立てて、判断して、結果を検証する。
それはもう日常に近い。
だから競馬と生成AIの組み合わせは、自分の感覚に妙に合う気がした。
11月最初の週末、試しにレースに参加してみることにした。
馬券購入は思っていた以上に簡単で、銀行口座との連携もすぐ終わった。
妻にも一言断りを入れて、即PATを設定。
これでデスクのパソコンから、空き時間に馬券が買える環境が整った。
ただし、自分なりのルールは決めた。
関心は「不確実性の分析と予想」なので、1レースあたりの上限金額を設定。
重賞レースのみ参加することにした。
理由は単純で、一次情報が豊富だからだ。
最初の予想は、JRAの公開データを生成AIに渡し、加点方式で評価。
結果は……全敗。
その結果をまた生成AIに渡し、批判的に振り返る。
そんなことを毎週、土日のレースで繰り返した。
気がつけば、馬券分析の仕組みはver3.2まで進化していた。
馬券購入総額の回収率は、おおよそ100%。
勝ってはいないが、負けてもいない。
「不確実性の分析と予想に挑戦する」という意味では、週末のレースが純粋に楽しみになった。
長く続けられそうな、新しい趣味になりつつある。
データ分析を楽しんでいるつもりが、いつの間にか競馬そのものや、その文化にも興味が向き始めている。
人生の後半で、こういう趣味があるのも悪くないな。
コメントを残す